マーケティングというと小難しい気がする
そんな食わず嫌いを打破するために、「1分間コトラー」を読んだ感想と介護事業に読み替えてみるシリーズ
ま、僕の煩悩と妄想には変わりないので、マーケティングの入り口として、気軽に読んで欲しい
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[rakuten no=”9784797366006″ shop=”book” kw=”1分間コトラー 顧客を虜にする戦略的マーケティング77の原則 西村克己”]
1分間コトラー
016
価格を売り物にしてはならない。価値を売り物にすべきなのだ。
P・コトラー
インターネットが当たり前の時代
以前は情報通がお徳に買い物が出来る時代があった
しかし、今では 価格.COM などで誰でも簡単に値段を比較することが出来る
そして低価格競争が始まると、完全に負のスパイラル
自社の商品を使うという体験を通して、どのような価値観を顧客へ提供するのか
これが商売の極意のようだ
さて、介護事業はどうだろうか
介護保険サービスは上限価格が設定されており、いわゆる公定価格通り、日本全国ほぼどこでも同じような料金体系でサービスを受給することが出来る
保険者間で保険事業である介護保健サービスの利用料に不公平感が出ないように設定されていると僕は理解している
ということは、この原則はそのまま介護事業所の原則となる
国は公定価格以下の料金設定で、競争を促そうとしているが、これは無理
今の報酬体系で、介護事業の担い手である介護職の平均年収を見るとわかる
360万 *ボーナス、手当て込み
これが国が示した平均年収だ
ネットなどで「こんなにもらってるわけが無い」「データ改ざんだろ」なんて声が聞こえるが、実際はこれくらい貰ってるはずだ
じゃあなんでネットで騒がれている?
単純に給与の仕組みを理解できてないだけだろう
ここで単純な計算式
基本給:16万(時給換算930円程度)
資格手当:1万
夜勤手当:2.5万
処遇改善交付金:3万
ボーナス:基本給の夏1.5ヶ月、冬2ヶ月
年収=326万
上記に通勤手当などのその他の手当てがあれば、大体国が提示してる金額になる
職員募集で求人広告は大体この程度、若しくはこれ以上だ
全産業平均の420万よりは低いが、国が高めに報告してる訳ではないことがわかる
きちんとこういうことを職員へ説明している?
数字をきちんと把握することも大事な仕事だ
そしてそのことをきちんと説明する責任もある
国がー 国がー と嘆いている暇があったら、自分たちの提供するサービスの価値を見直したほうがよい
話はそれたが、ほぼ公定価格で全国一律の料金体系ならば、介護事業所はどこで差別化されるのか
サービスしかない
では介護事業所が差別化できるサービスって何だろう
そもそも差別化って何だろう
差別化はつまるところ、体験談で語られる
「今日は楽しかった、また明日も迎えに来てね」
「○○さん、あなたに介護されてよかった」
「お宅利用してから、ウチの親が自宅でも落ち着いてくれるようになった」
「預かってくれてありがとう、おかげで気持ちにゆとりが出来た」
これが差別化の体験談だ
それは介護技術なのかもしれない
それは介護理念なのかもしれない
それは介護知識なのかもしれない
それはあなたの性格かもしれない
それはあなたの笑顔かもしれない
すべては提供しているサービスが、それを利用している方にとってどれだけ価値があるのか
自分にとって価値があるサービスを受けられているのか
それだけだ
だから精一杯気持ちをこめて介護にあたる
それこそが価値ある介護サービスなのだから
017
「なぜおたくから買ったほうがいいのか」という質問に答えられなければならない。
P・コトラー
似たような質問
「あなたの事業所の特徴をひとことで云うとなんですか」
どれだけの介護職がこの質問に明確に答えられるだろうか
僕は特養についてこう答える
「最期まで安心して暮らせる場所ですよ」
即答だ
この答えにはいくつかのキーワードがある
・最期まで
・安心
・暮らせる
・場所
この4つだ
すべてを解説するのはまたの機会にするが、単に答えている訳ではない
この4つのキーワードを如何に表現していくか
この4つのキーワードに対して、何が出来るのか
いつも自問自答している
デイサービス、ヘルパー、ショートステイ、福祉用具レンタル、特養、小規模多機能、グループホームとサービスの種類はたくさんあるし、同じサービスでも事業所ごとに特徴がある
管理者や経営者などがこういう特徴を持って運営していこうと理念を掲げているはず
その理念に沿ってサービスを提供しているのか
そのサービスは必要とされているにか
答えを持っていないと、浮ついたきれいごとを並べてしまう
今からでも遅くは無い
自分の提供しているサービスの特徴を考えよう
018
欲しいと思う人だけでなく、実際に買える人がどのくらい存在するのかを判断しなければならない。
P・コトラー
ニーズ、欲求、需要
コトラー博士はこの3つの言葉を同じ意味と勘違いしてはいけないといっている
(と書いてある・・・)
マズローの5段階欲求説
介護関係者ならば知ってて当たり前の話
上の図で行くと、ニーズとは生理的欲求や安全欲求になる
EX)おなかが空いた
次に欲求はそのニーズに対して具体的なものへ変化する
EX)ラーメンが食べたい
そして需要は特定の商品に対する欲求
EX)今すぐ東京の某有名店のラーメンが食べたい
ラーメンは星の数あれど、沖縄に住む僕が今すぐに東京まで飛行機に乗って、某有名店のカウンターに座り、評判のラーメンにありつけることはない
実際にお腹が空いたとき、東京の某有名店のラーメンが食べられるのは、一般的にその某有名店へのアクセスが容易な人となる
そんな時、この東京の某有名店が沖縄に出店すると・・・
僕は行っちゃうわけ
チェーン店のマーケティングって、ただ大きな都市に支店を出すわけでなく、そこにウチのお店の商品を欲している人がどれ位いて、どれ位の人が商品を買うのか分析する
ま、誰でも知っている
では介護福祉業界はどうか?
自分の事業所が存在する保険者圏域に、要支援1の人が何人いて、要介護2の人が何人いてって気にしてる方がどれ位いるだろう?
僕が勤める事業主は沖縄県介護保険広域連合下にあるので、ありがたいことに毎月統計資料が掲示されている
毎月とは云わないが、2~3ヶ月に一度はデータを確認している
認知症サポーター講座などを開催する際に、必ずその開催地域のデータをスライドに入れている
スライドの内容は
・総人口
・高齢者数
・高齢化率
・要介護認定者数
最低でもこれだけ入れる
なので、ある程度今後の介護需要も想定できる
詳細は省くが、今後、全国的に医療ニーズは減退し、2050年頃まで介護需要は伸びる
*地区ごとに違うので、一概には言えないが・・・
そこで考えるわけである
次への展開、新規事業、職員教育などなど・・・
コンサルタントの研修を受けたとき、この辺を徹底された
人手不足が加速する中、あなたは本当の介護需要に気づいてる?
019
粗利益重視の姿勢も、判断ミスの原因となる。
P・コトラー
この原則を福祉介護で例えると面白い
一般企業なら長期的な視野がないと、しっぺ返しが来るといえる
日本の家電メーカーがガラパゴス化してしまい、世界と戦えず、集落の一途を辿っていることと同じだ
では介護福祉業界はどうか
特に介護保険事業は制度改正に左右される
いや、振り回されるといってよい
デイサービスは小規模で、小回り利くのがよいと勧めたかと思うと、コンビニの数より増え、保険財源を圧迫し始めたら小規模事業所はコスパ悪いから単価下げられる
3年に1回の改正で、報酬単価が上がり、経営状況が改善したことは無い
毎回、社会保障削減の大号令
一般の中小企業より、利益率が高いと報酬を下げる根拠にされたこともあった
そんな中、介護事業所はどういう対策をとるのだろう
利用者が減った⇒登録枠減らして職員数削る⇒職員少ないから利用受付できない・・・
この後は書く必要も無いだろう
改正の直前に情報収集しても遅いのである
介護保険の改正は「平成17年」がキーPoint
平成17年の時点で国はこのまま介護保険運用していたらヤバいと理解している
厚生労働省が「平成17年介護保険制度改革の基本的な視点と主な内容」を記しているのでそこを参考にして欲しい
このときの内容を粛々と進めている
国がどういう方向で改正を行い、なぜそのような方向性が出てきているのか
その真意を常に読み取りながら先回りしなければならない
ここを見誤ると、安易な方向転換で失敗してしまう
しっかり情報収集して、分析し、次への対策を怠ってはならない
020
顧客はハンターになった。
P・コトラー
喰うか、喰われるか! www
消費者は特定の企業を贔屓にするよりも、1回ごとに最も得になる企業と取引するようになった
そうである
まあそうだろう
わかりやすい例えなら携帯電話
NTT、au、SOFTBANKと3大事業所だけで回っていた日本
いつの間にやら格安携帯電話会社が増えた
初めのころは通話品質も悪く、通信速度も遅いため敬遠されていたが今はどうだろう
今では10%も格安携帯電話が普及している
シェアの1割はとても大きな脅威だ
格安通信事業者は、たゆまない努力で顧客のニーズに応えてきた
やがては国を動かし、2年縛りが無くなり、楽天が第4の通信体として開業する
まさしく顧客がハンターになった証だ
企業は消費者よりさらに敏感にマーケット動向を気にしなくてはいけない
福祉介護事業もそうだ
あなたが知らない間に、競合する同業者たちが、顧客である利用者やその家族などにインタビューを繰り替えし、サービスのあり方を改善している
そしていつの間にやら利用者が取られていく
004でも書いたが、待っているだけで利用希望者がやってくる時代は終わったのである
まとめ
いかがだっただろうか?
福祉介護の事業だからといって、マーケティングは関係ないなんて事はない
しっかりと理解することで、事業運営に役立つ
今回は長い記事になってしまった・・・
次回はもう少し簡潔にまとめていこう
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